- 2021.10.21労働時間該当性の取扱いの明確化について、何か参考になる例はありますか。
例えば、自己研鑽など労働時間に該当するものとしないものを明確化し、院内で周知することにつき、以下のような例があります。
(1)労働時間に該当するもの
A 診療に関するもの
1 病棟回診
2 予定手術の延⻑、緊急手術
3 チャーティング
4 サマリー作成
5 外来の準備
6 オーダーチェック
7 診療上必要不可⽋な情報収集
B 会議・打合せ
1 必須出席者である会議・委員会
2 参加必須の勉強会・カンファレンス
C 研究・講演その他
1 上⻑の命令に基づく学会発表の準備
2 上⻑の命令に基づく外部講演等の準備
3 上⻑の命令に基づく研究活動・論⽂執筆
(2)労働時間に該当しないもの
A 休憩・休息
1 食事
2 睡眠
3 外出
4 インターネットの閲覧
B 自己研鑽
1 自己学習
2 症例⾒学
3 参加任意の勉強会・カンファレンス
C 研究・講演その他
1 上⻑の命令に基づかない学会発表の準備
2 上⻑の命令に基づかない外部講演等の準備
3 上⻑の命令に基づかない研究活動・論⽂執筆
- 2021.10.7病院に勤務する医師が、セミナー講師を引き受けました。その時間は労働時間に該当しますか。
一般論としてお答えいたします。病院に勤務する医師が、勤務先以外の⽅から頼まれて、セミナーの講師を引き受けるなど、労働者としてではない形で役務を提供することもあるかと思いますが、そのような場合、その時間は労働時間には該当しません。
しかし、勤務先から指示されて実施する場合は労働時間です。また、セミナー主催者に雇用されて実施する場合も労働時間となります。
- 2021.9.1患者や利用者への訪問した場合の移動時間は労働時間となりますか
訪問診療・訪問介護の必要性が高まっています。
その移動時間が労働時間にあたるかどうかは、その移動時間において職員の自由利用が保障されていたかという実質的な判断にはなりますが、原則として以下のケースにより違ってきます。
①自宅から訪問先への移動時間
この時間は、基本的に通勤時間として取り扱われます。通常は、自由利用が保障されているので、労働時間に該当しません。
⓶訪問先から訪問先又は訪問先から職員の病院・事務所への移動時間
この時間は、通常、移動に努めることが求められており、自由利用が認められる特別な事情がない限り、労働時間となると考えられています。
③訪問先から自宅への移動時間
この時間は、①の取扱いと同様通勤時間として取り扱われます。
- 2021.6.1職員の休憩時間に急患対応をお願いしました、休憩の分割付与は問題ありませんか
労基法上、休憩時間を分割して付与することは可能です。
医師等(医師・薬剤師・歯科医師・助産師)は、法律により、応召義務が課されています。看護師等には応召義務は課されていませんが、急患対応の場面では、休憩時間を中断せざるを得ない場合は考えられます。この場合、中断がなければ休憩するであった時間分を、改めて労働時間の途中に休憩時間として付与する必要があります。
就業規則に、休憩時刻を記載する場合は、業務上の都合により休憩の時刻を変更することがある、又は分割して与えることがあることを記載しておくべきでしょう。
- 2021.3.18休憩時間中の外出は制限できますか
労基法では、「使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない」第34条3項と自由利用の原則を定めています。この自由利用の意義について行政解釈は、「休憩時間の利用について事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を害わない限り差し支えない」としており、この原則と休憩時間中の外出規制についても「事業場内において自由に休息し得る場合には必ずしも違法にはならない」としています。
但し、「必ずしも違法にならない」とは、完全に合法というのではなく、労働からの解放という休憩の目的を損なわず、一定の規制を加えることに合理性が認められる場合には自由利用の原則に反しないと言っています。
休憩時間の外出に制限を付けるのであれば、「許可制」より「届け出制」が自由利用の原則から望ましいと言えそうです。
- 2020.12.28夜勤者の休憩時間について、法令上何時間以上与えないといけませんか
労働基準法第34条において、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を労働時間の途中で与えなければならないことが定められています。
医療の現場では、24時間体制で入院患者の見守り、ケアが必要となります。そのために設けているのが「夜勤」という働き方であり、1か月単位の変形労働時間制を採用し、夜勤者の1日の所定労働時間について8時間を超える時間に設定していることが多いです。その場合の休憩時間数ですが、例えば2交代制で夜勤が16時間勤務の場合だと、8時間×2=2時間必要と考えたくもなりますが、労働基準法では休憩時間数については日勤・夜勤ともに同じであり、16時間勤務の場合であっても「8時間を超える場合は1時間以上」の文言より、業務の途中で1時間与えれば法違反とはなりません。
しかし、夜勤者の作業の能率、健康管理を考えると、まずは休憩をしっかり取らせるよう配慮すべきです。また休憩時間中は労働から解放させる必要があり、休憩時間中の労働者の行動に制約を加えることは禁止されていますが、業務により休憩時間を自由に利用させることができない場合は労働時間と見なし、時間外勤務手当を支給する必要があります。なお、看護協会では16時間夜勤等の長時間勤務の場合、2~3時間の休憩時間の付与が望ましいとしています。
- 2020.12.2オンコールが労働時間にあたるのか等オンコールの取扱いについて教えてください。
まず、労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たります(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定))。
そして、オンコール待機中に実際の診療が発生した場合、当該診療に従事する時間は労働時間に該当します。
オンコール待機時間全体が労働時間に該当するかどうかについては、オンコール待機中に求められる義務態様によって判断する必要があります。
オンコール待機中に求められる義務態様は、医療機関ごと、診療科ごとに様々であり、呼び出しの頻度がどの程度か、呼び出された場合にどの程度迅速に病院に到着することが義務付けられているか、呼び出しに備えてオンコール待機中の活動がどの程度制限されているか等を踏まえ、オンコール待機時間全体について、労働から離れることが保障されているかどうかによって判断するもので、個別具体的に判断されるものです。
- 2020.11.26医療機関における労働時間制度の活用についてどのようなものがありますか。
医療機関で活用される労働時間制度については、
(1)通常の労働時間制度における交代制勤務(2交代制、3交代制)
(2)1ヶ月単位の変形労働時間制
をとる方法が一般的です。
(1)「通常の労働時間制制度における交代制勤務(2交代制、3交代制)」とは、法定労働時間(原則として1日8時間、1週40時間。但し、常時10名未満の労働者を使用する保健衛生業の場合は1日8時間、1週44時間。)を前提として、あるいはこれに36協定を導入した上で、その範囲内において、変形労働時間制をとることなく、1日の始業時刻・終業時刻を2区分や3区分し、設定する方法です。
例として、午前7時から午後3時まで、午後3時から午後11時まで、午後11時から午前7時までの勤務の3交代制などです。
(2)「1ヶ月単位の変形労働時間制」とは、労使協定または就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより1ヶ月以内の一定期間(単位期間)を平均して1週当たりの労働時間が40時間(常時10名未満の労働者を使用する保健衛生業の場合は44時間)におさまる場合であれば、単位期間の特定の日または週について、1日もしくは1週の法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。
1か月単位の変形労働時間制の詳細(運用の手順、給与計算)については厚生労働省のリーフレットを参照ください。
- 2020.11.19医師の研鑽の労働時間該当性を明確化するための手続、及びその適切な運用を確保するための環境の整備について教えてください。
まず、医師の研鑽について、業務との関連性、制裁等の不利益の有無、上司(業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者)の指示の範囲を明確化する手続を講じます。
例えば、医師が労働に該当しない研鑽を行う場合には、医師自らがその旨を上司に申し出ることとし、当該申出を受けた上司は、当該申出をした医師との間において、当該申出のあった研鑽に関し、①本来業務及び本来業務に不可欠な準備・後処理のいずれにも該当しないこと、②当該研鑽を行わないことについて制裁等の不利益はないこと、③上司として当該研鑽を行うよう指示しておらず、かつ、当該研鑽を開始する時点において本来業務及び本来業務に不可欠な準備・後処理は終了しており、本人はそれらの業務から離れてよいこと、について確認を行うことが考えられます。
なお、上司は、業務との関連性を判断するに当たって、初期研修医、後期研修医、それ以降の医師といった職階の違い等の当該医師の経験、担当する外来業務や入院患者等に係る診療の状況、当該医療機関が当該医師に求める医療提供の水準等を踏まえ、現在の業務上必須かどうかを対象医師ごとに個別に判断します。
手続は、労働に該当しない研鑽を行おうとする医師が、当該研鑽の内容について月間の研鑽計画をあらかじめ作成し、上司の承認を得ておき、日々の管理は通常の残業申請と一体的に、当該計画に基づいた研鑽を行うために在院する旨を申請する形で行うことも考えられます。また、労働に該当しない研鑽を行おうとする医師が、当該研鑽のために在院する旨の申し出を、一旦事務職が担当者として受け入れて、上司の確認を得ることとすることも考えられます。
次に、これらの手続について、その適切な運用を確保するために次の措置を講ずることが望ましいとされます。
(ア)労働に該当しない研鑽を行うために在院する医師については、権利として労働から離れることを保障されている必要があるところ、診療体制には含めず、突発的な必要性が生じた場合を除き、診療等の通常業務への従事を指示しないことが求められる。また、労働に該当しない研鑽を行う場合の取扱いとしては、院内に勤務場所とは別に、労働に該当しない研鑽を行う場所を設けること、労働に該当しない研鑽を行う場合には、白衣を着用せずに行うこととすること等により、通常勤務ではないことが外形的に明確に見分けられる措置を講ずることが考えられること。手術・処置の見学等であって、研鑚の性質上、場所や服装が限定されるためにこのような対応が困難な場合は、当該研鑚を行う医師が診療体制に含まれていないことについて明確化しておくこと。
(イ)医療機関ごとに、研鑽に対する考え方、労働に該当しない研鑽を行うために所定労働時間外に在院する場合の手続、労働に該当しない研鑽を行う場合には診療体制に含めない等の取扱いを明確化し、書面等に示すこと。
(ウ)上記(イ)で書面等に示したことを院内職員に周知すること。周知に際しては、研鑽を行う医師の上司のみではなく、所定労働時間外に研鑽を行うことが考えられる医師本人に対してもその内容を周知し、必要な手続の履行を確保すること。また、診療体制に含めない取扱いを担保するため、医師のみではなく、当該医療機関における他の職種も含めて、当該取扱い等を周知すること。
(エ)医師本人からの申出への確認や当該医師への指示の記録を保存すること。なお、記録の保存期間については、労働基準法第109条において労働関係に関する重要書類を3年間保存することとされていることも参考として定めること。
詳しくは、以下の二つの通達をご確認ください。
https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/pdf/outline/pdf/8409f492f42ad468a0c15b1e2e6c6c56900ab1c3.pdf
https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/pdf/outline/pdf/49fa4a893745eb8515bd9d3d3786ed6794314276.pdf
- 2020.11.9医師の研鑽の労働時間該当性に関する考え方等について教えてください。
まず、所定労働時間内において、医師が、使用者に指示された勤務場所(院内等)において研鑽を行う場合については、当該研鑽に係る時間は、当然に労働時間となります。
他方、所定労働時間外に行う医師の研鑽は、診療等の本来業務と直接の関連性なく、かつ、業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者(以下「上司」という。)の明示・黙示の指示によらずに行われる限り、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しません。
しかし、当該研鑽が、上司の明示・黙示の指示により行われるものである場合には、これが所定労働時間外に行われるものであっても、又は診療等の本来業務との直接の関連性なく行われるものであっても、一般的に労働時間に該当するものとなります。
詳しくは、以下の二つの通達をご確認ください。
https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/pdf/outline/pdf/8409f492f42ad468a0c15b1e2e6c6c56900ab1c3.pdf
https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/pdf/outline/pdf/49fa4a893745eb8515bd9d3d3786ed6794314276.pdf