鹿児島県医療勤務環境改善センター

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労務Q&A

本センターでは、医療労務管理アドバイザー作成の「労務管理実務Q&A」を順次アップして参ります。医療機関の勤務環境改善に向けた取組みの推進にお役立てください。(Q.をクリックすると回答のA.が下部に表示されます。)

①いじめ・ハラスメント等①いじめ・ハラスメント等

2021.7.27たとえば、どのような言動がパワハラにあたりますか?

パワハラ防止指針では、裁判例や個別労働関係紛争処理事案に基づいて次の6つの行為類型がパワハラの典型例として整理されており、さらにその行為類型ごとに、パワハラに該当すると考えられる例、該当しないと考えられる例が挙げられています。
個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ること、ここに挙げられた例は限定列挙ではないことに十分留意して、職場におけるパワハラに該当するか微妙なものも含めて広く相談に対応するなど、適切な対応を行うことが必要です。
※ 例は、優越的な関係を背景として行われたものであることが前提です。

(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)
(イ)該当すると考えられる例
 ① 殴打、足蹴りを行うこと。
 ② 相手に物を投げつけること。
(ロ)該当しないと考えられる例
 ① 誤ってぶつかること。

(2)精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
(イ)該当すると考えられる例
 ① 人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む。
 ② 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと。
 ③ 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。
 ④ 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信すること。
(ロ)該当しないと考えられる例
 ① 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をすること。
 ② その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、一定程度強く注意をすること。

(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
(イ)該当すると考えられる例
 ① 自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりすること。
 ② 一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること。
(ロ)該当しないと考えられる例
 ① 新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施すること。
 ② 懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること。

(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
(イ)該当すると考えられる例
 ① 長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずること。
 ② 新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること。
 ③ 労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること。
(ロ)該当しないと考えられる例
 ① 労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること。
 ② 業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること。

(5)過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(イ)該当すると考えられる例
 ① 管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること。
 ② 気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと。
(ロ)該当しないと考えられる例
 ① 労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減すること。

(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
(イ)該当すると考えられる例
 ① 労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。
 ② 労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。
(ロ)該当しないと考えられる例
 ① 労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと。
 ② 労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと。
 この点、プライバシー保護の観点から、(6)(イ)②のように機微な個人情報を暴露することのないよう、労働者に周知・啓発する等の措置を講じることが必要です。

2021.7.9介護現場における(利用者・家族等による)ハラスメント対策について教えてください

・近年、介護現場では、利用者や家族等による介護職員への身体的暴力や精神的暴力、セクシュアルハラスメントなどが少なからず発生していることが様々な調査で明らかとなっています。
・施設・事業所に勤務する職員のうち、利用者や家族等から、身体的暴力や精神的暴力、セクシュアルハラスメントなどのハラスメントを受けた経験のある職員は、サービス種別により違いはあるものの、利用者からでは4~7割、家族等からでは1~3割になっています。ハラスメントを受けたことにより、けがや病気になった職員は1~2割、仕事を辞めたいと思ったことのある職員は、2~4割となっています。
・事業者(事業主)は、労働契約法に定められる職員(労働者)に対する安全配慮義務等があることから、その責務として利用者・家族等からのハラスメントに対応する必要があります。ハラスメント対策は介護職員を守るだけでなく、利用者にとっても介護サービスの継続的で円滑な利用にも繋がる重要な対策です。
・ハラスメントは、利用者や家族等の環境や生活歴、職員と利用者・家族等との相性など様々な要素が絡み合うことがあり、一律の方法では適切に対応できないケースもあります。ハラスメントが発生した場面、対応経過等について、できるだけ正確に事実を捉えた上で、事業所全体でよく議論し、ケースに沿った対策を立てていくことが重要となります。
・厚労省の「介護現場におけるハラスメント対策」のサイトに、ハラスメントの実態を伝え、取り組むべき対策などを示したマニュアルや研修の手引き・動画や事例集が公開されています。事業所が具体的に取り組むべきこと、利用者・家族等に対する周知のポイント、相談しやすい職場づくり、発生時後の各対応、職員・管理者別の取組み方など、参考となる詳しい情報や手引きツールがありますのでご活用ください。

2021.2.22事業主が、職場におけるパワーハラスメントを防止するために講ずべき措置について教えてください。

 令和2年6月から、雇用管理上の必要な措置を講ずることが義務(中小医療機関等については令和4年3月までは努力義務)となりましたが、まず、事業主の方針の明確化及びその周知・啓発として、パワーハラスメントの内容、及びパワーハラスメントを⾏ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発することが必要です。また、パワーハラスメントの⾏為者については厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発することも必要です。
 次に、相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備として、相談窓⼝をあらかじめ定めて労働者に周知すること、相談窓⼝担当者が内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること、パワーハラスメントが現実に生じている場合だけでなく発生のおそれがある場合やパワーハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても広く相談に対応することが必要です。
 さらに、職場におけるパワーハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応として、事実関係を迅速かつ正確に確認すること、事実関係の確認ができた場合には速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に⾏うこと、事実関係の確認ができた場合には⾏為者に対する措置を適正に⾏うこと、再発防止に向けた措置を講ずることが必要です。
 そして、併せて講ずべき措置として、相談者・⾏為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じて労働者に周知することが必要なほか、事業主に相談したこと、事実関係の確認に協⼒したこと、都道府県労働局の援助制度を利⽤したこと等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定めて労働者に周知・啓発することが必要です。
 なお、以上のほかに、望ましい取組もあります。
 こちらのパンフレットが参考になります。
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

2021.1.26職場におけるパワーハラスメントの定義について教えてください。

 職場における「パワーハラスメント」とは、職場において行われる① 優越的な関係を背景とした言動であって、② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③ 労働者の就業環境が害されるものであり、①~③までの要素を全て満たすものをいいます。
 客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、②の要素を満たさないため、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。
 「職場」とは、事業主が雇⽤する労働者が業務を遂⾏する場所を指し、労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、労働者が業務を遂⾏する場所であれば「職場」に含まれます。勤務時間外の「懇親の場」、社員寮や通勤中などであっても、実質上職務の延⻑と考えられるものは「職場」に該当しますが、その判断に当たっては、職務との関連性、参加者、参加や対応が強制的か任意かといったことを考慮して個別に⾏う必要があります。
 「労働者」とは、いわゆる正規雇⽤労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員などいわゆる非正規雇⽤労働者を含む、事業主が雇⽤する全ての労働者をいいます。また、派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者(派遣先事業主)も、自ら雇⽤する労働者と同様に、措置を講ずる必要があります。
 ①「優越的な関係を背景とした」⾔動とは、業務を遂⾏するに当たって、当該言動を受ける労働者が⾏為者とされる者(以下「⾏為者」という。)に対して抵抗や拒絶することができない蓋然性が⾼い関係を背景として⾏われるものを指します。
 ②「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」⾔動とは、社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、⼜はその態様が相当でないものを指します。
 この判断に当たっては、様々な要素(当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題⾏動の有無や内容・程度を含む当該言動が⾏われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性((例)経験年数や年齢、障害がある、外国⼈である 等)や心⾝の状況((例)精神的⼜は⾝体的な状況や疾患の有無 等)、⾏為者との関係性等)を総合的に考慮することが適当です。
 また、その際には、個別の事案における労働者の⾏動が問題となる場合は、その内容・程度とそれに対する指導の態様等の相対的な関係性が重要な要素となることについても留意が必要です。なお、労働者に問題⾏動があった場合であっても、⼈格を否定するような言動など業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動がなされれば、当然職場におけるパワーハラスメントに当たり得ます。
 ③「労働者の就業環境が害される」とは、当該言動により、労働者が⾝体的⼜は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったために能⼒の発揮に重大な悪影響が生じる等の当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。
 この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、「同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会⼀般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうか」を基準とすることが適当です。
 なお、言動の頻度や継続性は考慮されますが、強い⾝体的⼜は精神的苦痛を与える態様の言動の場合には、1回でも就業環境を害する場合があり得ます。
 職場におけるパワーハラスメントは、①から③までの要素を全て満たすものをいい、個別の事案について職場におけるパワーハラスメントの該当性を判断するに当たっては、②で総合的に考慮する事項のほか、当該言動により労働者が受ける⾝体的⼜は精神的な苦痛の程度等を総合的に考慮して判断することが必要です。
 このため、個別の事案の判断に際しては、相談窓⼝の担当者等がこうした事項に⼗分留意し、相談を行った労働者(以下「相談者」という。)の心⾝の状況や当該言動が⾏われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、相談者及び⾏為者の双方から丁寧に事実確認等を⾏うことも重要です。
 これらのことを⼗分踏まえて、予防から再発防止に⾄る⼀連の措置を適切に講じることが必要です。
 こちらのパンフレットが参考になります。
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

2020.10.8パワハラ防止法について教えてください。

 法律において初めてパワハラが規定されました「改正労働施策総合推進法」。パワーハラスメント防止を企業に義務付けることが決まり、令和2年6月から、雇用管理上の必要な措置を講ずることが義務となります。中小医療機関については令和4年4月からとなり、それまでは努力義務となります。特に罰則は定義されていませんが、必要に応じて事業主に対して助言・指導・勧告が行われ、それに従わない場合は企業名が公表される可能性がありますので注意が必要です。
 パワハラは、いくつか発生してしまう要因が存在し(加害者側・被害者側)、防止するためには様々な取り組みのポイントがあります。院長等のトップからのメッセージ、就業規則や社内規定に文書で示し周知を行い、相談窓口を設置・紹介してアンケート等を実施、教育のための研修などといった取り組みが必要です。医療勤務環境改善支援センターでは具体的な取組みを進めるための助言・派遣指導も行っておりますのでご活用ください。

2020.9.17いじめやハラスメント、職員間暴力を防ぐためには、職場でのコミュニケーションを活性化させることが大切だと考えますが、そのための取組みとして、フィッシュ哲学を取り入れている病院があると聞きました。それについて簡単に教えてください。

フィッシュ哲学とは、①遊び心を取り入れる、②人を喜ばせる、楽しませる、③相手に注意を向ける、④態度を選ぶ、の4つの原理をもつ概念です。アメリカのシアトルにある魚市場発祥の概念であることから「フィッシュ哲学」と称されました。
フィッシュ哲学の概念を看護現場に取り入れた結果、離職率の低下、新人看護師の定着率の向上、職務満足度の向上、患者苦情相談件数の減少、職場内のコミュニケーションの活性化、人間関係が良好になったことが報告されています。
職場が活気にあふれるような遊び心を取り入れ、同僚等に対してエネルギッシュな楽しい雰囲気で接し、人が自分を必要としている瞬間を逃さぬように気を配り、ポジティブな姿勢で出勤するようにすることが、イキのいい職場へのコツのようです。
パワーハラスメント防止対策の法制化・パワーハラスメント防止措置等の実施義務の創設等の法改正(令和2年6月1日施行(中小医療機関等については令和4年3月31日までは努力義務))がなされるなか、参考になる概念といえそうです。
(参考文献 『医療機関における暴力対策ハンドブック』中外医学社)

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